王者の矜持、再び。
― 第74回全日本学生ホッケー選手権大会 男子決勝 ―
天理大学 vs 立命館大学
インカレ2連覇を狙う天理大学、そして王座優勝を果たし二冠を目指す立命館大学。
男子ホッケー界を牽引する二強が再び相まみえた決勝の舞台は、開始前から異様な熱気に包まれていた。
試合の口火を切ったのは天理大学。センターパスとともに、頂点を懸けた80分が動き出す。
第1Q ― 先制を許すも、崩れない守備 ―
試合序盤、立命館大学が最初の好機をつかむ。8分、ペナルティコーナー(PC)を獲得するも、天理守備陣が冷静に対応し、得点を許さない。
だがその直後の9分、立命館#5小林の鋭いパスが中央へ通り、こぼれ球に反応した#25米崎が押し込む。立命館が先制点を奪った。
失点後も天理は動じることなく、GK#18黒田の果敢な飛び出しで決定機を防ぐなど、王者らしい落ち着いた守備を披露。
第1Q終了間際にはPCのチャンスを得るも、立命館GK#2馬場の好セーブに阻まれ、スコアは0–1。
重厚な守備戦の幕開けを予感させる立ち上がりとなった。
写真提供=中村雄紀夫様
第2Q ― 攻めて、攻めて、なお崩れず ―
天理大学は反撃のリズムをつかみ始める。7分、#11田中のヒットシュート、続く9分には#6中嶋の打ち込みから#10川上がシュートを放つも、立命館GK馬場の好守が立ちはだかる。
守備では#18黒田を中心に集中したブロックで立命館の鋭い攻撃を封じ、わずかな隙も与えない。
互いに譲らぬ攻防のまま前半を終え、スコアは立命館の1点リード。静かなる闘志が後半へと受け継がれた。
写真提供=中村雄紀夫様
第3Q ― 林の一撃、魂の同点弾 ―
後半に入っても均衡は崩れず、両者の気迫がぶつかり合う。
9分、天理#11田中のスクープパスから#12小林がリバースで狙うもGK馬場に阻まれる。
直後の10分には立命館がPCを得るが、#9重山のフリックは枠を外れた。
そして11分、試合が再び動いた。#6中嶋のスクープパスを受けた#25林がサークル内で完璧にトラップ。体勢を崩さず放ったフォアヒットがゴールネットを揺らす。
鮮烈な同点弾。ベンチもスタンドも歓声に包まれ、天理が完全に勢いを取り戻した瞬間だった。
その後、退場者を出す時間帯もあったが、チーム全体の統率された守備でピンチを凌ぎきり、王者の意地を見せた。
写真提供=中村雄紀夫様
第4Q ― 守護神・黒田、魂のセーブ連発 ―
最終Q、勝ち越しを狙う立命館の猛攻が続く。
開始2分、立命館#1川原のドリブル突破からのシュートをGK黒田が驚異の反応で防ぐ。
その直後にも決定機を迎えるが、黒田が鋭く前に出て立ちはだかる。
まさに「サムライジャパン」GK同士の意地と技が激突する時間帯だった。
12分、再び立命館が混戦からリバースシュートを放つが、黒田がスーパーセーブでこれを阻止。
そして試合終了間際、立命館がPCを獲得。会場全体が息を呑む中、#9重山の一撃は天理DF陣の気迫のブロックに止められた。
天理が最後までゴールを割らせず、1–1のまま試合終了。勝負の行方はシュートアウト戦へと委ねられた。
写真提供=中村雄紀夫様
SO戦 ― 冷静と情熱の4本 ―
守護神・#18黒田紀彰。幾度となくチームを救ってきた男が、再びゴール前に立つ。
立命館のGKは#2馬場風和。若き才能と経験を備えた好守の対決となった。
先攻・天理。#12小林が巧みなフェイントでGKをかわし、冷静に先制。
続く#6中嶋もPSを獲得し、#3渡部が沈めてリードを広げる。
立命館も意地を見せて追いつくが、#18黒田のリファーラル成功で流れを引き戻した。
そして4人目、#2原が落ち着いてシュートを決めると、立命館の4人目#11樋口は惜しくも枠を外す。
天理リードのまま迎えたラスト。#10川上慎が静かにボールをセット。
一瞬の間を見極め、GKの動きを読み切ったループシュート。
放物線を描いたボールがネットへ吸い込まれた瞬間、ホイッスルが鳴り響いた。
写真提供=中村雄紀夫様
歓喜、涙、抱擁。
天理大学がシュートアウト4–2で立命館を下し、インカレ連覇を達成した。
写真提供=中村雄紀夫様

優勝・天理大学 (連覇・33回目) 写真提供=佐藤茂樹様
王者、風格の証明

昨年、ラストワンプレーで勝利をつかんだ天理大学。
そして今年もまた、最後の一打まで勝敗の行方がわからない死闘を制した。
守護神・黒田を軸に、全員が己の役割を果たし続けた80分+SO。
王者としての誇りと冷静さ、そしてどんな状況でも揺るがぬ精神力。

そのすべてが、再び頂点に立ったチームの証となった。
天理大学ホッケー部――王者の名にふさわしい戦いが、ここに刻まれた。




